エロスの軌跡(4): 男性同盟の精神からの国家の誕生

Translated title of the contribution: Die Spur des Eros(4): Die Geburt des Staates aus dem Geiste des Mannerbundes

Research output: Contribution to journalArticle

Abstract

前稿「エロスの軌跡(3)」ではハンス・ブリューアーの第一次世界大戦前の著作を取り上げ、ヴァンダーフォーゲル運動をモデルとしたブリューアーの男性同盟理論、特に男性同盟の結合原理としてのブリューアーにおけるホモセクシュアリティーの概念を、マグヌス・ヒルシュフェルト、ジークムント・フロイトのそれと比較検討した。本稿ではブリューアーが第一次世界大戦中 と戦後間もなく発表した彼の主著『男性社会における性愛の役割』 Die Rolle der Erotik in der männlichen Gesellschaft (Ⅰ;1917: Ⅱ;1919)を考察の対象とし、ブリューアーの男性同盟理論がしだいに拡大されて、国家を男性同盟の頂点に立つものと規定するに至る経過をたどる。 『男性社会における性愛の役割』第1巻でブリュアーは、ヘテロエローティシュな結合原理に基づく「家庭」の対蹠点にホモロエローティシュな結合原理に基づく「男性同盟」を置くが、この基 本テーゼが展開されるのは、ようやく第2巻に至ってからである。第1巻においてブリューアー は俗流フロイト的な手法で男性の性的な性格を6つのカテゴリーに分類している。重要なのは、第一次世界大戦前の著作で、ヴァンダーフォーゲルを論じたさいに「男性英雄」(Männerheid) タイプとして称揚された、健康で全人格的な同性愛者のタイプがここでも「インヴェルズス・タイプ」(Der Typus inversus) としてきわめて重要視され、このような性的性格を持った男性を中心として「男性同盟」が形成される、としている点である。 第2巻では先に述べた「家庭」の対蹠点にあるものとしての「男性同盟」が強調され、女性原理の排斥が「種の保存」を超える精神的な活動のためには肝要である旨が説かれる。また「文明」の産物である「一夫一婦制」を相対化し優秀な男性に性的自由を保証する「多婚制」が推奨されたり、社会学者であり民族学者でもあったハインリヒ・シュルツ (Heinrich Schurtz) の著作から、いわゆる「未開民族」における男性同盟的結社の存在が家庭生活よりも高度な社会的活動のためには必須である、というコンセプトが引用されたりする。最後にブリューアーは男性同盟の頂点として国家を措定するが、その中心に性的な求心力を持ったカリスマ的存在が君臨することを待望している。非日常的で魔術的な求心力を持ったカリスマに関しては、ほぼ同時期にマックス・ヴェーバーも論じているが、本稿の後半ではブリューアー、ヴェーバー両者のカリスマ論の共通点と相違点についても言及した。
Original languageGerman
Pages (from-to)33-47
Number of pages15
Journal独仏文學研究
Volume47
Publication statusPublished - 1997

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