企業農業経営における「農業の見える化」による人材育成

坂上 隆, 南石 晃明, 竹内 重吉

研究成果: ジャーナルへの寄稿学術誌査読

抄録

急速な農業就業人口の減少,地域の担い手不足による耕作放棄地の増大,後継者不在による廃業など,農業には多くの問題点が指摘されている。この様な環境の中,企業農業経営は増加しており,農業の担い手としての社会的要求に対応することで,今後さらなる発展が期待できる。しかし,経営規模の拡大が進むと従業員が増え,いかに優れた人材を確保し育成するかが,経営上大きな課題となる。継続的発展を企業農業経営が成し遂げるためには人材育成が欠かせない。そこで,実際の営農現場における取組事例を詳細に分析すると共に,今後の課題とその解決方策を検討する事が望まれている。先行研究として,南石はICT(情報通信技術)を使って経営者,あるいは熟練者の技術や知識をいかに「見える化」し,後世へ継承していくかということを研究している。また,梅本らは農作業ナレッジの抽出法について検証し,鶴岡は経営者の生産管理行動について整理している。また,佐々木は「見える化」による現場力の強化を検証している。さらに,藤井らは,知識科学・一般経営学などの分野での代表的なポランニーや野中などの研究を踏まえ,大規模水田経営における従業員の能力養成と情報マネジメントに関するナレッジの継承方法について考察を行っているが,農業分野における技能・知識の伝達・継承や従業員の能力養成方策の検討に際しては,農業生産現場での事例分析を積み重ねる必要があるとしている。この他,従業員の能力養成面での効果を客観的に検証する事,性質の異なる領域を対象とした技術・知識の継承方法についても検討の余地が残されている。そこで本研究では,(株)さかうえにおける人材育成の取り組みについての全体像(取組みの過程やその背景にある考え方)を明らかにする。また,こうした取組から得られた知見やノウハウの蓄積と「農業の見える化」の手法を分析し,人材育成の方策およびその効果を検討する。
寄稿の翻訳タイトルPersonnel training in farming company with "agricultural visualization"
本文言語日本語
ページ(範囲)109-114
ページ数6
ジャーナル農業経営研究
51
3
DOI
出版ステータス出版済み - 2013

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