抄録
<p>【目的】原始卵胞卵の維持と活性化は個体の生殖期間を決定する重要な機構である。本研究では原始卵胞卵の維持,活性化における外的環境に着目し,その制御機構を明らかにすることを目的とする。【方法・結果】原始卵胞卵を維持する外的環境として細胞外基質に着目した。原始卵胞卵形成過程における細胞外基質(ファイブロネクチンやⅣ型コラーゲン)の発現を免疫染色によって解析した。胎生期の卵巣では隣接する中腎に比べ細胞外基質の染色性が微弱であったが,出生後の卵巣では卵胞構造の周囲を細胞外基質が囲んでいた。次に,細胞外基質と卵母細胞の維持における関係を調べるために,コラゲナーゼを含む酵素液で卵巣を処理し体外培養を行った。その結果,原始卵胞卵の活性化が促進されることが明らかとなった。原始卵胞卵は卵巣内の皮質側に位置し,周囲を一層の扁平な顆粒膜細胞に囲まれている。卵巣皮質は髄質に比べて細胞が密にあること,周囲を囲む顆粒膜細胞の形状が扁平であること,から原始卵胞卵は物理的な圧力下にあるのではないかと考えた。そして,細胞外基質の酵素による消化は圧力の低下を引き起こしているのではないかと考えた。そこで,実験的に加圧できる装置を用いて卵巣の酵素処理を行ったところ,原始卵胞卵の活性化が抑制されることが明らかとなった。さらに,この際に原始卵胞卵はその核を回転させていることに気づいた。これまでに核の回転はダイニン依存性であるという報告がなされており,原始卵胞卵においてもダイニンの阻害剤によって核の回転を抑制できることが確認できた。そして,核の回転を抑制すると原始卵胞卵の活性化が促進されることから,核の回転は原始卵胞卵の維持に働いている。興味深いことに,この核の回転は酵素処理によって停止するものの,加圧条件下における酵素処理では維持される。すなわち原始卵胞卵の核の回転は卵巣皮質の圧力条件下における現象であると考えられる。以上より,原始卵胞卵は卵巣皮質において加圧条件下にあり,その核を回転させることによって休止期を維持していると考えている。</p>
寄稿の翻訳タイトル | Microenvironment to regulate the dormancy of primordial follicle |
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本文言語 | 日本語 |
ページ(範囲) | OR1-24-OR1-24 |
ジャーナル | 日本繁殖生物学会 講演要旨集 |
巻 | 112 |
号 | 0 |
DOI | |
出版ステータス | 出版済み - 2019 |